あらすじ
2022 年12月25日
───東京の夜。
三嶋たくとはその日も、仕事の休憩中、雑居ビルの陰でたばこを吸っていた。
その時間はちょうど、女優をやっている彼女、岸本かなの舞台本番が終わろうとしている時間だった。
その舞台の演目は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」。三嶋は昔からこの話がどこか好きになれなかった。
それは三嶋の身に降りかかった過去の出来事が原因だった。
2005 年4月25日
──────尼崎の朝。
三嶋たくとはその日も、母親の看病をしていた。
その時間はちょうど、小学校に行く時間だったが、この日だけは、母親の薬を受け取りに電車に乗り、病院へと出掛けていた。
電車はラッシュを少し過ぎた時間。
まもなく尼崎に着く、その瞬間、車内は⼤きく揺れ、気付けば三嶋の体は、宙に浮いていた。
9時18分。後にこの事故を、「福知山線脱線事故」と名付けられることとなる。